発達障害と薬のお話

発達障害の治療の一環として薬を使ったものがあります。しかし薬物療法と聞くと不安があるかと思います。ここでは発達障害に用いられる薬の種類や効果について解説していきます。

発達障害に対しての薬物療法って?

発達障害の症状の軽減に対する治療として、医師の判断で薬が処方されることがあります。しかし発達障害を根本から”治す”薬は現在ありません。そのため、発達障害に対して薬が処方される場合は発達障害の中核症状の改善という目的ではなく症状を抑えたり抑うつなどの二次的な障害を抑える目的で使われます。

薬を処方するのは、医師にしかできないことです。薬によっては、一部の医師にしか処方が許されていないものもあります。また、発達障害と診断されたからと言って必ず薬が処方されるというわけでもありません。医師の判断によって、必要に応じて必要なタイミングで説明を受け処方されます。

薬によって期待できること

発達障害における薬は全て対症療法であり、発達障害そのものをなくすものではありませんが症状を和らげる効果は期待できます。では、薬によってどんな効果が期待できるのでしょうか?

自閉症スペクトラム障害の特徴である「社会性・対人関係の障害」「コミュニケーションの障害」「行動や興味の偏り」と言った中核症状を直接和らげると言った目的で薬が使われる事はあまりありません。しかし自閉症スペクトラム障害に伴う関連症状、特にADHDで見られるようなものに対しては薬の効果が期待されています。

主な例を挙げると

・癇癪 ・こだわり ・不注意 ・多動/衝動性 ・チック ・抑うつ などです。

発達障害に用いられる代表的な薬3種類

主にADHDで見られる症状に対して用いられる薬を中心に紹介します。現在、日本で処方が認められている薬は「コンサータ」「ストラテラ」「インチュニブ」の3つです。「インチュニブ」だけは2019年6月から18才以上に対する処方が始まったばかりで服用者が極端に少なく、どんな効果や副作用が大人に出るかは経験的にまだよくわかっていません。

3つの薬はどれもADHDの特性の軽減や緩和を目的に開発されたものですが、実際にはそれぞれの効果のある領域や強さが異なります。また、服用してから効果が表れるまでの時間や効能時間、体への影響の仕方にも違いがあります。

ではそれぞれの薬の特徴を見ていきましょう。

コンサータ

不注意に効果が有ります登校・出社前など1日の始まりに一度服用し、日中は効果を持続しますが、薬の切れ目もはっきりとしています。ドーパミン・ノルアドレナリンの再取り込みを抑えます。主な副作用は食欲不振や入眠困難などが挙げられます。

ストラテラ

ADHDの特性全般的に効果があります24時間血中濃度が安定するように朝晩2回の服用で緩やかに効くようにできています。ノルアドレナリンの再取り込みを抑えます。効果が感じられるまでには数週間かかりますが、ストラテラは適切に服用すればコンサータよりも副作用が軽く済みます。主な副作用は、眠気、気持ち悪くなることによる食欲低下、頭痛などです。

インチュニブ

多動・衝動に効果があります「コンサータ」「ストラテラ」の2つの薬の神経伝達物質の送信側の再取り込みを抑制するのとは異なり、受信側の神経伝達物質の漏れを防ぐ仕組みで、体重に合わせて服用量が変わります。副作用としてインチュニブには血圧を下げる効果があり、心疾患のある患者さんが服用するのは難しい点があります。特に房室ブロック(第 2 度、第 3 度)がある方は服用できません。また約半数の方に眠気が現れるとの報告もあるようです。

副作用も人それぞれ

副作用の原因のひとつは、薬物が目的とは違うところに働いてしまうことです。例えば脳内でドーパミンを十分な量届けて欲しいとして飲んだ薬が、他の神経伝達物質にも作用してしまうことがあります。また、目的通りに脳内のドーパミンの量が増えたとしても、そのため注意力が高まると同時に目が冴えて不眠になる、といったことが起こります。

また厄介なのが副作用は薬の効き目と同じで、飲んでみなければその人にどの程度現れるのか分からないことです。「服用してからの方がかえって辛かった」と言う人もいれば、逆に「特に副作用はなかった」「合わなかったけど、他の薬に変えてもらったら平気だった」というケースもよくあります。

何を目的にして薬を飲むか、薬を飲むメリットとデメリットは何か、いつまで薬を続けるか、そうした事柄を医師と話し合い、しっかり納得した上でお薬を服用することが重要です。

まとめ

発達障害に対して用いられる薬を紹介してきましたが、あくまでも症状を「治すもの」ではなく「緩和させるもの」という認識が大切です。薬は生活の質を高めるためのあくまで選択肢の一つ、として考えておくのがいいと思います。

発達障害の治療においては、薬物療法のみを行うのではなく、薬によって症状が緩和された中で環境調整やSSTなどの教育的なアプローチを中心に行うことが大切です。

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