発達障害の診断に用いられる検査って?
発達障害の診断ってそもそもどうやって行なっているんだろう?
と、疑問に思われる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん診断するのはお医者さんですが、パッと子供を診て判断をしているのではありません。診断に至るまで、様々な検査結果や診断基準と見比べて判断をしているのです。
何を診断基準にしているの?
では何を診断基準にしているのでしょうか?長年の経験と知識?いえいえちゃんと診断基準があるのです。
それは、「ICD-10」国際疾病分類と「DSM-5」精神疾患の診断・統計マニュアルの2種類です。
共通点は多くありますが「ICD -10」はWHOの診断基準で、「DSM -5」はアメリカ精神医学会の診断基準になります。
お医者さんは、様々な検査結果を元にこれらの診断基準と照らし合わせ、日常生活でどんな不具合が起きているのかなど様々な視点から診て診断名を決めているんですね。ただ診断名をどちらから取るかは、医療機関の先生によって差があるようです。
発達障害の診断に用いられる検査って?
さて、ここからが本題です。
診断の判断材料に使われる検査について触れていきましょう。
主に生育歴などの問診と行動観察・血液検査・脳波検査・発達検査・知能検査です。
発達検査と知能検査はいくつか種類があるので代表的なものを紹介していきます。
生育歴などの問診と行動観察
問診は保護者に聞き取りを行う事が多く、本人にどんな症状や特性がありどんな事に困っているかを聴取します。内容として今までの社会性や人とのコミュニケーション能力、言葉の発達について、幼稚園や保育園での様子、1歳半・3歳検診での様子を中心としたものです。
行動観察は遊べる空間で子供を遊ばせてみて行動や言葉、反応などを注意深く観察し問診と合わせて発達面にどんな特性がありそうかをみていきます。
血液検査
血液検査によって今の体(内臓の働きなど)の状態や遺伝的要因など様々な事が特徴です。
甲状腺機能低下症や染色体異常など発達障害の要因についてもわかる事が多くあります。また発達障害以外にも貧血や高脂血症などの発見・治療にも役立ちメリットが多くあります。
また今後薬による治療を行う場合も分量や副作用の有無などリスクを回避できる判断材料にも役立ちます。
脳波検査
あまり聴き慣れないと思いますが重要な検査の一つがこの脳波検査です。
脳波検査とは、脳から出る電気を大きくして記録し視覚的に捉えられるようにしたものです。脳には、140億個もの細胞があり目まぐるしく活動しています。何かを感じた時や体に命令を出す時に、この細胞から微弱な電気が発生し様々な情報伝達を行います。この時に生じる電気が脳波という事です。
検査は簡単で頭に電極を貼り付けるだけで行えます。ただし動かずにじっとしていられないと正確な脳波が取れないので、受ける側も理解や慣れが必要となってきます。
脳波検査では脳の活動状況が診れる為、突発的な異常活動を起こすてんかんについてよくわかります。
発達障害児にとっても有用で、気づかず通さなてんかんを起こしていることや異常波が出ている事があるそうです。また異常波の種類によっては発達の遅れの原因になっている事もあり、てんかん治療だけでなく発達障害の治療に結びつくこともあるそうです。
発達検査
発達検査では、子供の発達の度合いを調べる事ができます。発達の度合いを数値化することによって特性や助けが必要な部分を見つける事ができるのです。よく用いられる代表的な2つをご紹介します。
遠城寺式乳幼児分析的発達診断検査
乳幼児の発達を『運動』、『社会性』、『言語』の3つの分野から把握しようとするものです。
『運動』を「移動運動」と「手の運動」、『社会性』を「基本的習慣」と「対人関係」、『言語』を「発語」と「言語理解」に分けて、6つの領域から構成されています。
子どもの発達を6つの領域から分析的に観察し把握することで、子ども一人一人にみられる全体的な発達の特徴を明らかにする事が出来ます。
適用年齢は、0か月から4歳8か月までです。発達段階を乳児期は1か月ごとの12段階、1歳から1歳6か月までは2か月ごとの3段階、1歳6か月から3歳までは3か月ごとの6段階、3歳から4歳8か月までは4か月ごとの5段階に分けています。0歳児から利用でき、早期の年齢区分をより細かくしていることが特徴です。
新版K式発達検査
乳幼児や児童の発達の状態を、精神活動の諸側面にわたってとらえることが出来るように作られています。発達の精密な観察を行い、精神発達の様々な側面について、全般的な進みや遅れ、バランスの崩れなど発達の全体像をとらえるための検査です。
この検査では、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価します。3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面に、検査の重点を置いています。
検査用具や検査項目の多くは、子どもにとって遊びと感じられるようで、子どもの自発的かつ自然な行動が観察しやすいようになっているのも特徴の一つです。
適用年齢は、生後100日頃から満12~13歳頃までと考えられていますが、検査項目としては、新生児用の項目から、生活年齢14~15歳級の項目までを含んでいます。
知能検査
知能検査は心理検査の一つであり、精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値などによって測定されます。発達検査は発達全体を見る事ができるのに対し、知能検査は知的な能力をより詳しく捉える事が出来ます。
WPPSI-Ⅲ 知能検査
国際的にも広く用いられている検査ですが、我が国では特に現在、いわゆる軽度発達障害の子供などのアセスメントに広く用いられてきています。
この検査の最大の特徴は、全般的な知能水準が測定できることに加えて、「言語性の知能指数(VIQ)」と「動作性の知能指数(PIQ)」の2つの知能発達を見ることができる事です。
言語性知能とは、主に耳から入った聴覚情報を処理する能力のことです。動作性知能とは、主に眼から入った視覚情報を処理する能力のことです。
さらに、この検査のもう一つの大きな特徴としては、言語理解(VC)、知覚統合(PO)、注意記憶(FD)、処理速度(PS)という四つの「群指数」という指標を求めることもできるので、より詳細に子どもの知能発達を測定・分析することが可能となっています。
適応年齢は、2歳6ヶ月~7歳3ヶ月までとされています。
田中ビネー知能検査
この検査もIQを見る事が出来ますが、最大の特徴としては「年齢尺度」が導入されていることです。
できなかった課題、あるいはできた課題の年齢的な基準が示されていて、他の同世代の子どもと比較してどのくらい発達しているか、あるいは遅れを示しているのかの手掛かりやイメージをつかみやすい構成になっています。
この知能検査は、適用年齢も2歳から成人までと幅が広く、他の知能検査と比較すると実施の手順が簡便であるために、子ども自身も検査者も精神的・時間的負担が少ないことなどが大きな特徴となっています。
1歳級の問題も解けない子供へのアプローチの参考となる「発達チェック」も追加され、幅広く医療・教育機関で使用されています。
まとめ
各種検査の代表的な物をご紹介しましたがこれらはお医者さんが、その人その人に応じて必要な物を組み合わせながら行なっていきます。
乳幼児期は成長に伴い症状や特性が軽減したりと大きく変わりやすいこともあり、一度出た診断が見直されたり変わることもあります。
以前よりは発達障害の認知度が上がったものの、見えにくい症状の子供もいて、支援の得られない状況で悪化したり、診断が遅れる事がしばしばあります。
周りが障害に気づかず、見逃されている場合も少なくありません。大人になってから初めて診断が下る場合も多いそうです。
当事者側も検査だけではなく発達障害を取り巻く問題に対し、正しい知識を身につけていけば発見の遅れや不用意な不安を軽減できるのではないかと考えます。